2つ前のブログ「スマイリーキクチさんの人権講演会聴いてきました」をアップした後、
「これ、次のFMで話そう!」
と原稿を書き始めました。すると、2つ前のブログの内容があまりに薄かったと反省し、FM放送原稿をそのまま増補版として載せることにしました。読むのが面倒な方は2026年7月14日(火)10:00からのFMかほくをお聞きくださいね。(ネットラジオ、YouTubeでもお聞きになれます)
※2つ前のブログと重なる箇所があります
<スマイリーキクチさんの講演会を聴いてきました>
先日、7月8日(水)に、私は金沢歌劇座で開催された、スマイリーキクチさんの講演会を聞いてきました。
この講演会の情報をキャッチしたのは多分facebookに流れてきた情報です。それまでに私は、スマイリーキクチさんがネット上で殺人犯扱いされて大変な思いをされたということを、うっすら知ってはいました。でも、ちゃんと本を読んだりしたわけではありませんし、正直、ぜひ知りたいと思っていたわけでもありませんでした。それでもたまたまご本人による講演会が開催されるということですぐに申し込みをしました。なにしろ無料でしたから。
<Wikipediaより>
まずはスマイリーキクチさんについてWikipediaから概要をお話いたします。
(以下キクチさん)
キクチさんは、1999年から2008年まで、過去のある殺人事件の犯人(関係者)であるというデマがインターネット上に流れたことがきっかけで、誹謗中傷や脅迫を受けました。その経験から、芸能活動の傍ら時折インターネットに関するマナー講座や講演会にも呼ばれるようになり、番組出演のほか、インターネットに関する様々なトラブルへの対策を論じたコラムやエッセイの執筆オファーも引き受けていらっしゃいます。
当時、ウィキペディアにも殺人事件に関してそのデマを鵜呑みにした記述がされ、そのまま放置されていました。
<講演会の導入>
講演会の導入として、写真が紹介されました。電車の中で男性が、股間にカメラを隠して撮影しているという写真。この写真に「これじゃ安心して電車に乗れない」と説明書きがあります。しかしこれ、合成写真なんです。ほかにも熊が2頭、学校の前に居座っているものや、トランプ大統領が殴られている動画。全てフェイク画像です。
また
「Wikipediaで調べるのは誰でもすること、でも、Wikipediaは辞書じゃない。その入り口としてそこからさらに自分でよく調べてほしい」
と強く仰っていました。私もWikipediaをよく使う人間として気をつけたいと思いました。
それでは、彼の経歴や活動において、特に重要なポイントをいくつかご紹介します。
<お笑い芸人としてのキャリア>
1993年にお笑いコンビ「ナイトシフト」を結成し、その後ピン芸人として活動を開始。
1990年代後半から2000年代にかけて、『ボキャブラ天国』や『エンタの神様』などの人気お笑い番組に出演し、毒舌を交えた漫談やコントで人気ものになりました。
<「スマイリーキクチ中傷被害事件」の発端>
1999年頃、1988年に発生した「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人の一人であるという、完全に事実無根のデマがネットの掲示板(2ちゃんねる等)に書き込まれました。
書き込みの最初は、犯人の名前の列挙された掲示板の最後に、キクチさんの本名が書き込まれたこと。その書き込みを見た人から
「そいつを知っている。お笑い芸人をしている」
と情報が書き込まれ、それをきっかけにどんどん拡散されていったのです。
その拡散の中で、やってもないネタを書かれたり、言ってもない謝罪を書かれたりもされました。
2チャンネルに削除依頼をしたときは
「やってない証明をしてください」
との返答でした。「やっていないこと」の証明はとても困難であり、一般に「悪魔の証明」と呼ばれたりします。もちろんキクチさんにできるはずがなく、2チャンネルの書き込みは放置されたままでした。
そんな中、出演しているTV局や出演しているコマーシャルの会社などへ 出演番組への降板要求、所属事務所への脅迫、さらには殺害予告など、すさまじい誹謗中傷が始まり、長期間にわたって続くことになりました。
<警察への相談と事件の解決>
それなら警察に言えばいいと思いますよね。しかし、当時はネット犯罪に対して警察にもノウハウがも少ない時代でした。相談に行っても
「まだ被害にあってないですよね」
「ノイローゼじゃないの」
「刺されたら来てください」
と、実際に爆破されたとか、刺されたとかでないと相手にしてもらえません。
その時点でキクチさん自身への脅迫は勿論、キクチさんの彼女の容姿を書き込んだり、キクチさんがよく行くラーメン屋さんや乗り降りする電車の駅まで書かれるなど、精神的にとんでもない苦しみを味わっていたにもかかわらずです。
しかし、キクチさんは諦めずに相談を続け、2009年、つまり脅迫被害にあい始めて10年経ってやっと警察が本格的な捜査に乗り出しました。信頼できる刑事さんに出会われたからです。その時その刑事さんは
「今までこの事件を放置してきて申し訳なかった」
とご自身のせいではないのに謝ってくださったそうです。心からの謝罪を感じてキクチさんはそれまでの恨みが全部吹き飛ぶような気持になったとおっしゃっていました。
そこから捜査が進み、結果、中傷を書き込んでいた男女数10人が一斉に書類送検されるという、ネット中傷事件としては歴史的な摘発事例となりました。
脅迫していた人はさまざまで、中には関西の超名門大学の人も含まれていました。
<事件の再燃>
そういうことで一旦被害は下火になったかと思っていたある日、キクチさんへの誹謗中傷が再燃し始めました。どうしてまた急に、と調べたところ、元警視庁刑事の北芝健(きたしば けん)氏が2005年に出版した『治安崩壊―凶悪犯罪社会を生き抜くために知るべきこと』(講談社)という新書です。
この本の中で、キクチさんの名前自体は直接出されていませんでしたが、足立区出身の芸人であることなど、明らかにキクチさんだと特定できるような書き方で「女子高生コンクリート詰め殺人事件に関与していたと推定される」といった主旨の内容が記述されていました。
当時、ネット上の掲示板(2ちゃんねる等)で一部の心ない人たちが流していた根も葉もないデマを、元警察官という肩書きを持つ人物が、書籍というメディアで「事実であるかのように」扱ってしまったため、それまでデマを半信半疑で見ていた人たちまで信じ込む事態となり、キクチさんへの誹謗中傷や脅迫の被害が爆発的に拡大する最大の引き金となってしまいました。
<その後の著者の対応について>
キクチさん側の抗議や警察の捜査が進む中で、出版社である講談社側は増刷分から該当箇所の記述を削除する対応を取りました。
キクチさん自身の著書『突然、僕は殺人犯にされた―ネット中傷被害の10年』の中でも、この本が原因で被害が致命的に悪化したこと、そしてその後の著者側の不誠実な対応に対する深い苦悩や憤りがリアルに綴られているようです。
元警察関係者という世間的な信用がある人物の無責任な記述が、デマに「偽りの箔(はく)」をつける形になり、どれほど一人の人間を追い詰めることになるかという、ネット中傷の歴史においても非常に根深い問題を残した事例です。
<現在の活動(情報モラル啓発の第一人者)>
この過酷な実体験を乗り越えたキクチさんは、現在は芸人活動と並行して、「一般社団法人インターネット・ハート・シールド」
の代表理事を務めるなど、ネットの安心・安全のための啓発活動を軸に置かれています。
~主な活動内容~
全国の小・中・高校・大学での「情報モラル教育」の講演
警察学校や自治体、企業向けのサイバー犯罪対策講座
著書『突然、僕は殺人犯にされた―ネット中傷被害の10年』での実態告発
<キクチさんの講演から心に残った部分>
お話の密度が濃くて、とても全部メモはできませんでした。それでも特に心に残ったことを上げてみます。
・言葉は凶器にもなる
・ネットの向こうには生身の人間がいる
・正義を振りかざして制裁をしようとする人がいるがそれは違う
・誹謗中傷で捕まった人はストレスやイライラをぶつけている。もしストレスがたまったら、人や情報から逃げましょう
・インターネットでデマを流して再生回数を上げることがビジネスになっている
・情報に触れたら情報発信者を疑う
・誹謗中傷された時はそのスクリーンショットを日時込みで撮って証拠を残しましょう。ネットのURLはPDFで保存しましょう
・削除申請は7日以内に行わなければならない
・誹謗中傷した人は「冗談」「悪ふざけ」で済ませようとするが、どう感じたかはやられた方が決める
・法務省に書き込み削除依頼の手引きがR7年から掲載されています。
私も検索してみました。「法務省 削除依頼」と検索すれば、一番上に出てきます
<講演会の感想>
キクチさんには、このことが始まった時から現在まで、1度も殺人予告・爆破予告の無かった年はないそうです。
キクチさんはさすが芸人さん、お話そのものはとても深刻なのに、それを深刻になりすぎず、わかりやすい言葉でユーモアを交えてお話になるので、1時間半があっという間でした。
一つ、西野真理個人として思い出深いことがありました。私が1番前の席に座ったところ、開会前にスマイリーさんが目を合わせてニッコリ笑いかけてくださって、幸せな気持ちになりました。また、講演会後、キクチさんがエックスにこんな投稿をされていました。
本日は石川県金沢市で講演会でした。平日にもかかわらず、たくさんの参加者が!感謝です!!誹謗中傷の話しを真剣に聴いてくださり、デマに惑わされない対策や詐欺の対処法など、メモを取る姿に感激しました。参加者の皆様、主催者の皆様に感謝です。
ここに書いていらっしゃる「メモを取る姿」の一人は私のことかもしれません。
詳細につきましては、キクチさんの著書『突然、僕は殺人犯にされた―ネット中傷被害の10年』を是非お読みくださいませ。
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