友さんの旅立ち 2026年8月14日(金)

朝、不在着信に気づきました。歌の練習を常に録音しながらしているので、ついスマホをマナーモードにしてそのままなのです。いけないなと思いながらずっと。今日こそやめましょう。で、誰から?野口先生です!すぐにお電話しました。

「いや~真理さん、あなたとお誕生日が同じ母が、今朝、おそらく4時過ぎくらい、老衰で亡くなりました、106歳。実にいい顔で。こちらでは家族葬で行いますから親戚にだけ知らせたんですが、真理さんには格別にお世話になったのでお知らせしようと思って。母とは一緒に歌を歌ってもらったり~」
格別にお世話をなんてとんでもないことですが、そう思っていただけることを素直に喜びたいと思いました。一緒に歌を歌ったりというのは、私が素麺塾で野口先生のお宅に伺った時、友さんの前で歌を歌い、友さんも一緒に歌ってくださったことが何度かあった、そのことです。友さんは100歳を過ぎても音程は正確、高音はよく伸び、歌詞もちゃんと暗記されている素晴らしい方でした。

お電話の後、私の追悼の気持ちを表せるのは歌しかないと思い、以前友さんの句に曲をつけさせていただいた「サイダーや~」を改めて歌って野口先生のMessengerにお送りすることにしました。すぐに歌えると思いきや、前回ピアニストの近藤陽子ちゃんに録音していただいたはずのピアノ伴奏が行方不明で、まずピアノ伴奏を録音。その後30回くらい歌い直して、やっと歌も録音を終えました。そして再度野口先生にお電話し
「先生、Messengerに私の追悼の気持ちを送らせていただいたので」
とご連絡。
その後、野口先生からもったいないほどのお礼のお電話をいただきました。

終わりに「サイダーや~」を2021年にYouTubeにアップした際添えていた文章をこちらに転載し、私の追悼といたします。

<「サイダーや 昔話も 泡となる」>


この曲は、2021年2月に101歳のお誕生日をお元気に迎えられた、千葉県在住の野口友子さんの俳句に、西野真理が曲をつけさせていただいたものです。

友子さんの略歴は、私自身、友子さんからお誕生日にお贈りいただいた「俳句・随筆集『松風』」(画像で最初と最後に写っている本です)で初めて知ったことがほとんど。驚いたり、ときに笑ったりの連続でした。ここでその一部を略歴としてご紹介させていただきます。
 
~野口友子略歴~(敬称略)
・新潟県新発田(しばた)出身
・父は士官学校卒の日露戦争経験者。士官学校では東条英機が同期。退役後、早稲田の法科に入り、さらに千葉師範学校で教練を担当。後に友子の夫となる薫を指導する
・薫は師範学校を卒業し教師となり野口家に婿入。10年後に妻と死別
 遺児二人を抱えた中、第二次世界大戦の兵役検査で甲種合格
・薫の応召後の相談を受けた友子の父から、「友子を」と結婚の話が急遽まとまる
  (結局、薫が召集されることはなかった)
・26歳の友子は新発田税務署に勤務していたがすぐに辞表を出し、夫に迎えられて千葉へ
・その長男(薫の前妻の子)が教育者・野口芳宏
・夫・薫の指導のもと俳句の道へ。7人の子宝にも恵まれる
・2021年現在101歳。お誕生日は西野真理と同じ2月21日
・101歳のお誕生祝いにスマホを贈られ使いこなしている

さて、友子さんとは教育者・野口芳宏先生のお宅で夏に開催されている「流し素麺塾」でお会いしました。ほんの数年前のことです。

そもそも初めて素麺塾に参加する時、私は
「いい大人が、千葉県まで行ってお素麺を食べるなんて」
と思っている不届き者でしたが、なぜだか参加することになり行ってみると、本当に全国から野口先生を師と仰ぐメンバーが集まり、交流していました。参加者は教育関係者だけでなく、野口先生が教育関係の本を多く執筆していらっしゃる関係で、誰もが知る大手出版社の編集担当のみなさんも。
「野口先生のお宅で」
と書きましたが、決して普通のお宅ではありません。敷地が広大で、幼稚園の子なら敷地内で遠足です。その一角(?)に海岸に例えると「海の家」みたいなものが作ってあって、ちゃんと竹で「素麺流しセット」が作られています。

そこで俳句を作ったり、お話を聞いたり、敷地内散策をしたりするのですが、歌うことでしか自分をアピールできない私は、当然歌う機会を狙っているのです。
みんな、なんとなくお素麺を食べ終え、俳句作りも終え、ちょっと時間に余裕ができたところを見計らって、友子さんの前で歌ってみると、幸いお喜びいただけました。また、一緒に歌ってみると、これはお世辞でもなんでもなく、友子さんの歌が相当うまいのです。音程の良さはもちろんですが、声の出し方に無理がなく、歌詞も全て暗記。
音楽の素養のお有りの方なのだとすぐに分かりました。
その血を受け継いでいらっしゃるのが、指揮者で東京音楽大学の先生、次男の野口芳久さんです。
いつまで経っても作曲の話に行かないので、そろそろそちらへ。

2021年2月中旬。
友子さんのお誕生日と私のお誕生日が一緒なので、当然お誕生日を覚えており、また、101歳のお誕生日をお祝いするなんて、こんな稀な体験、そう多くの方がされることはないであろうと、心ばかりの「雛まんじゅう」をお送することにしました。このおまんじゅうは美味しさはもちろんですが、パッケージがとても可愛くて私も大好きなのです。
お送りした数日後お返しに頂いたのが「俳句・随筆集『松風』」です。

早速開いてみると、友子さんの声が聞こえてきそうな随筆と俳句がぎっしり。
すぐに
「曲をつけられそうなものはないか」
という方向に頭が動きはじめました。
前回、100歳のお誕生日に
「薫風や 孫二十一人 目に入れて」
という俳句に作曲させていただき、YouTubeにアップさせていただいているので、101歳でもと考えたからです。
曲をつけるにあたって私が一番気をつけたのは、
「聴いてすぐわかる」
ということです。
例えば
「麦秋の 真っ只中に 嫁ぎ来し」
など、とても好きなのですが、これを耳で聴いて、しかも「麦秋」が6月の風景だとわかるのはちょっと難しいと感じます。
そこで今回選ばせていただいたのが、「サイダー」の句です。
実はどちらにしようか迷ったものがありました。
「ケンタッキーの 空に泳ぐや 鯉のぼり」
これもとても好きですが、友子さんの娘さんがアメリカにいらっしゃることを知らないと、面白さが伝わりにくいかと思い「サイダー」をとりました。

2021年2月28日朝
「今日は『サイダー』に曲をつけてYouTubeにアップしよう」
と、起きてすぐ思いました。
もちろん曲はできていません。

6:30頃から考え始め、なんとなく曲が出来上がりましたが、最初に頭の中で出来上がったものは、普通に歌うには音が高すぎる気がして、再考。
1時間ほどで大まかに曲はできたので歌ってみると、
「まあそれなりかな」
程度。
「これは、ピアノパートにかかっている!」
と、ピアノパート作りに取り掛かりました。

まず前奏ですが、これは句の「泡」からすぐに童謡「シャボン玉」を連想したので、
「♪~しゃ~ぼんだ~ま~とんだ~」
の曲を連想していただけるよう、「シャボン玉」のフレーズを少し使ってみようと考え、後奏にもそれを持ってきてまとめることにしました。この作戦はなかなかだと自負しています。
また、この曲は子守唄ではないのですが、全体を子守唄風に左手の音をずっと同じ音で弾き続けるスタイルにしようと思いついたところで、かなりまとまってきて、9時前には出来上がりました。

次はピアノパート録音です。
あ~~~これが最難関。
ピアノの録音のたびに、幼い頃ピアノの練習をサボって
「ピアノの練習をした」
と嘘ばかりついていた「嘘つきまりちゃん」のことを深く反省します。
でもとにかく頑張って録音しましたが、下手なことこの上ない。

そこで気づいたのは、YouTube「日本歌曲の窓」チャンネルをご一緒しているピアニスト近藤陽子さんです。
「プロに弾いてもらおう!」
とりあえず楽譜をライン送信後電話してみましたがつながらず、自力で弾くしか無いと諦めたかけた時、陽子ちゃんから連絡有り!!!
事情を説明すると、陽子ちゃんはこの日、伴奏合わせの仕事を抱えていながら、あっという間に1度目の演奏を録音し私へライン送信。その後色々やり取りの末、11時過ぎには2度目の演奏を送信していただいて(最初に私が送った楽譜の音が間違っていたのです)無事録画体制に入ることができました。
持つべきものはピアニストです。

歌の録画が終わり編集しようとした時
「お贈りいただいた『松風』も画像も載せよう!」
と思いつき、飾ってあったお雛様のお内裏様にちょっとどいてもらって、金屏風の前に本を置いて撮影。私の歌の画像の前後に配置し編集完了。
そしてまずは非公開でYouTubeにアップ。
なぜ非公開かって?
だって友子さんに許可とってないんだもん。

13:22 野口芳宏先生にお電話し、友子さんのスマホ番号をお聞きする。
13:55 友子さんにお電話し、YouTubeアップの許可を取る。

とりあえず公開設定をしてからこのエッセイ部分を書き始めました。
というわけで、現在2021年2月28日15:35
任務完了。
疲れたので休憩にYouTubeでも見ようかな。


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