積読チャンネル「家族経営はなぜもめまくるのか」より 2026年4月22日(水)

これは2026年4月21日、FMかほくで放送するために書いた原稿を、ブログ用に書き直したものです。読むのが面倒な方はYouTube動画をどうぞ。

 <家族経営はなぜもめるのか 大塚家具の場合>
積読チャンネルより
参考動画 URL: https://youtu.be/zzb_HVNpFnE

① オープニング
皆さまは、2015年に世間を騒がせた『大塚家具のお家騒動』を覚えていらっしゃいますか? 
・・・と、その前に、私の自戒を込めたお話から。

2007年、ある殺人事件がありました。その報道のされ方は、結局犯人ではなかったAさんを、その風貌やインタビューへの受け答えから、犯人と印象付けるようものでした。
報道を見た私も犯人はAさんに違いないと思い込みました。
結局早い段階で真犯人は見つかり、Aさんの無実が明らかになりました。
それ以後、少なくとも両者の意見をちゃんと聞き、冷静に判断しなければならないと肝に銘じたはずでした。
しかし、その後何度も、つい報道されることを鵜呑みにし、そのたび反省しながら現在に至っています。
そ一つにはいわゆる「ガーシーさん」と呼ばれた東谷 義和(ひがしたに よしかず )さんの事件もあります。そのことはFM 放送でもお話し、このブログにも書いています。興味をお持ちの方はどうぞご覧ください。ネット上にもたくさん出てきます。

②今日の本題、大塚家具の騒動とは
当時の報道では、
「会員制の高級路線を守りたい創業者のお父さん」
と、
「低価格路線に変えていきたい社長の娘さん」
の経営戦略の違いによる対立、あるいは
「親子の泥沼の喧嘩」
とされていました。
私も報道を見て、
「世間知らずの二代目のお嬢様が、せっかくお父さんが築き上げた高級路線の家具屋を方向転換させようと思っている」
という風に見ていたと思います。
しかし、実はあの報道の裏には全く別の真実があったのです。

今日は、当時の社長であり創業者の娘である大塚久美子さん自身が執筆した著書
『後継者不足時代の事業承継』
を紹介しているYouTube動画を元に、同族経営(ファミリービジネス)の恐るべきリアルと、そこから学べる「人生の運命の選び方」についてお話しします。

②大塚久美子さん
まず、大塚久美子さんについて簡単にご紹介します。
~Wikipedia情報~
1968年生まれ。
1991年3月に一橋大を卒業し、同年4月に富士銀行に就職されました。新入行員研修を経て、融資業務を担当。2年後の1993年に本部に転勤して国際広報業務を担当。
入行から3年後の1994年に富士銀行を退職し、大規模小売店舗立地法改正を受けて業容拡大を目指しており、人手が足りなかった家業の大塚家具に入社。10年間で売り上げを3倍にする。
久美子さんは10年でいったん会社を辞め、5年間別の会社を経営。
その後再び、戻ってくれという父親の要請を受けて大塚家具へ社長として戻る。

実際、2015年当時に私が聞きかじった
「大塚家具は高級家具路線から安いものを売る方へ路線変更」
というようなことを久美子さんは言ったこともなく、あくまでも
「よいものを割安に売る」
という路線。そこは全く変わっていないのです。

② ニュースの裏側にあった「本当の争点」
では本当は何で揉めていたのでしょうか?
 実は、対立の本質は経営戦略の違いではありませんでした。争いの元凶は、
「埼玉県春日部市に数十億円規模の大規模な投資(店舗と倉庫を兼ねた施設作り)をするかどうか」
というお父さん側からの提案でした。
会長であるお父さんは、創業の地への恩返しと、自分の引退後の居場所確保のためにこの投資をしたかった。しかし、当時の大塚家具はリーマンショックや東日本大震災があり、赤字から回復したばかりで、その後消費税の増税があることがわかっていたため、社長である娘さんや取締役会は会社を守るためにこれを否決したのです。

それではなぜ
「親子喧嘩」
として報道されたのでしょう?
否決されて納得のいかないお父さん側は、外部のアドバイザーをつけて世間に向けた
「ゲリラ戦(プロパガンダ)」
を仕掛けました。 
「娘の経営方針がおかしい」
「親の心子知らずだ」
というプレスリリース(報道機関に向けた、情報の提供・告知・発表)を出し、世間が面白がるような
「親子喧嘩」
へと論点をずらしたのです。
それなら大塚久美子さん側も反論すればいいとお思いでしょうが、反論できなかったのには理由があります。 上場企業は法的な縛りがあるため、感情的で大げさなプレスリリースは打てないのです。
さらに、久美子さん側が
「コストやリターンを冷静に計算した結果です」
と正しい事実を発表しても、ニュースやワイドショー的には面白くありません。完全に久美子さん側が
「言われ負け」
してしまったのが世間の抱くイメージの正体でした。

③ファミリービジネスの残酷なリアル
なぜ家族経営はドロドロするのでしょうか?:
それは家族と仕事仲間という
「多重関係」
が原因です。
普通の会社なら家に帰ればリセットされますが、家族経営だと会社での激しいプレッシャーや対立をそのまま家に持ち込むことになり、逃げ場が一切ありません。

ここで、給料のお話。
 家族を高給で雇うのは単なるエコ贔屓に見えがちですが、実は
「普通の社員には頼めないような理不尽な仕事や汚れ仕事」
を無理を承知で頼めるから、という過酷な裏事情もあります。
 実際に久美子さんも、最初は都市銀行に就職して自立していましたが、父と弟の「緩衝材」として間に入るために呼び戻され、理不尽な役回りを引き受けてきました。

また大塚久美子さんはお父さんについてこんな風に書いていらっしゃいます。
「創業者の周囲にいる人は往々にして創業者について誤解をしていらっしゃいます。人生をかけて育ててきた会社を。自分の分身として自分より大切だと考えるのが創業者だと。しかし、創業者にとって会社は『分身』ではなく『自分の本体』なのかもしれません。自分の死後、誰かが自分の体に乗り移ってそれを自由に動かすなど耐えられいと感じているのかもしれません。あるいは最愛のものを他人にとられるくらいなら、壊してしまいたいと思うのかもしれません」
確かにそういわれてみますと、私も今、訳詩活動にかなり力を入れていますが、私が訳したものを誰かが勝手に、部分的に変えていって別の訳詩にされたらいやだなあと感じる気がします。

④ 大塚久美子さんが語る自身の人生観
久美子さんは自信の人生を、理不尽な騒動に巻き込まれ、個人としても経営者としても傷つき
「決してハッピーな人生だったとは言えない」
と語っています。
 しかし、
「家業に入ったことを後悔しているか?」
という問いには
「そんなことはない。豊かな人生だった」
と答えています。

ではなぜ、あんなに辛い目に遭って納得できるのか? 
それは家業を継ぐ際、
「自分には他の選択肢(銀行員として生きる道など)もある」
と分かった上で、あえて自分からその道を
「選んだ」
からです。
他の道もあったけれど、私がこの道を決断したのだと思えれば、どんなに理不尽で辛い環境でも主体性を持って生きられ、人生に納得感が生まれます。

⑤終わりに
さて、今日のお話は、大塚久美子さん自身が書かれた本ですから、お父さん側がもし本を書かれたらまた別の面が見えてくるかもしれません。それでも、あの報道がされた時とは大きく感じ方が違うことも確かです。
皆様も家族の問題や仕事の環境など
「逃れられないしがらみ」
を感じることがあるかもしれません。しかし、それを
「選ばされた」
ではなく
「自分で選んだ」
と捉え直すことで、少し見え方が変わるかもしれません。
今日のお話は、YouTube積読チャンネルから、大塚久美子さんの書かれた
「後継者不足時代の事業承継」
をご紹介しました。


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西野真理の色々なお話

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