過疎ビジネス~コンサル栄えて国滅ぶ~ より 2025年12月15日(月)

この内容は、2025年12月16日(火)10:00からのFMかほく生放送での原稿として書いたものです。ぜひFMもお聴きくださいね。78.7MHzでお聞きいただけない遠くの皆様は、ネット配信でもお聞きいただけます。また生放送ですけれど、YouTubeにもアップしますので、水曜日以降いつでもお聞きになれます。(YouTubeは生放送時もあり)

<ノンフィクション作品 「過疎ビジネス」~コンサル栄えて国滅ぶ~>
今日はYouTubeチャンネルで最近多く取り上げられている、「過疎ビジネス」という本についてのお話です。
私はこのことを全く知らないまままず、YouTubeで見ました。それがあまりにも興味深いので、検索してみると、ほかのYouTubeチャンネルでも取り上げられていて、私は同じ内容を4つのYouTubeチャンネルで見ました。それぞれに聞き手の角度が少しずつ違っていて、4つ見ても飽きることはありませんでした。この本の作者で河北新報の新聞記者の横山勲(つとむ)さんが出演されているものもありました。意外に分かりやすかったのは、YouTubeではありますが音声のみの、河北新報オンラインチャンネルで、横山さんが、もう一人の新聞記者の方とお話されていたものです。

そして始めはこの内容をYouTubeから書き起こしてFMでご紹介するつもりでした。結果的にはそうなのですが、あまりに興味深かったのでYouTubeでは飽き足らず、本を購入してしまいました。購入して読んだ結果思ったのは、
「FMで全部読みたい!」
でした。
しかし、さすがにそんなことはできないので、涙を呑んで敢えてYouTubeから抜粋で書き起こしたものを今日は皆様にご紹介いたします。

それでは始めます。

この本は宮城県仙台市に本社を置く河北新報記者の横山さんが、第73回菊池寛賞を受賞したノンフィクションの本『過疎ビジネス』です。この本には「コンサル栄えて国滅ぶ」という相当強い副題も付けられています。
地方創生政策の裏側に広がる「過疎ビジネス」の実態と、企業版ふるさと納税を悪用したマネーロンダリングの疑惑について詳細に解説しているものです。

まず、これに登場する「コンサルタント会社」についてご説明します。実は私自身もよくわかっていなかったので、とても勉強になりました

コンサルタント会社(コンサルティングファーム)とは、企業や組織が抱える経営・戦略・IT・人事などの様々な課題に対し、専門知識と分析力を用いて分析・解決策の立案・実行支援を行い、企業の成長や変革をサポートする専門企業です。単に助言するだけでなく、プロジェクトチームを組んで深く入り込み、実行まで伴走するケースも増えており、戦略系、総合系、IT系など専門分野で多様なファームが存在します。

ずいぶん前のことですが、在職中同僚に、
「コンサルタントってなに?」
と聞くと
「西野さん、先生に歌のレッスン受けてるでしょう?会社がレッスン受けてるって感じだとおもうよ」
と答えてくれたことがありました。あの時の同僚はなかなか良い例えで分かりやすく端的に教えてくれたなあと思います。

コンサルタント会社の問題点として2つ挙げてみますと
1つ目が、事業運営経験の不足:
 戦略立案は得意でも、実際の事業運営や現場経験が不足しているコンサルタントも存在します。また、最終的に責任をどこまで負うか、契約にもよるでしょうがあいまいです。

2つ目は資格や実績の見えにくさ:
コンサルタントは特定の資格がなくても名乗れるため、実力や実績が見えにくく、依頼側が質の高いコンサルタントを見極めるのが難しい場合があります。

では話を戻します。
横山さんは、入社後の地方回りや震災報道をされた方で、今回の報道の中心舞台となったのは福島総局時代のことです。
今回の取材のきっかけは、
「この町の町長、副町長、教育長といういわゆる特別職3人と、総務課長の給料を勝手に上げた」
という、いわゆるタレコミからでした。横山さんはそのことを調べているうちに、今回のことに気づき、取材を進めていくことになりました。

問題の根源は、2014年から始まった第二次安倍政権下の「地方創生」にあります 。人口減少と都市集中という構造的な課題への対策として始まったものの、10年が経過しても成功例は限られていました。その裏側で、地方の窮状につけ込む「過疎ビジネス」が横行したのです。

その事例の一つが、横山さんが取材した福島県国見町の事業。国見町は宮城県と福島県の県境にある人口8000人ほどの町です。

そこに近づいたのが、宮城県にある防災ゼリー製造会社「ワンテーブル」。
この会社は地方創生コンサルタント会社も兼ねていました。そして総務省の地域力創造アドバイザーという肩書きを持っていた元社長を中心に、国見町に対して
「高規格救急車を大量に購入し、研究開発を経て他の自治体へ貸し出す」
という提案をします。
国見町は自前の消防署を持たない広域消防組合の管轄下であり、そもそも救急車のリース事業を行う必然性がない、「意味の分からない事業」だったと横山さんは指摘しています。
この不可解な事業の資金源は
「企業版ふるさと納税」
でした。ワンテーブルは、グループとその関連会社3社から、合計で4億3200万円という巨額の寄付を国見町に取り付けていました。

国見町は事業を公募型プロポーザルで発注しました。

プロポーザルとは自治体や企業が業務委託先などを選定する際、単なる価格競争ではなく、提案内容の質(企画力、技術力、実績など)を総合的に評価して最適な事業者を選ぶ「企画競争入札」方式のことです。

それにワンテーブルの元社長がアドバイザーとして募集要綱の作成に介入 。その結果、ワンテーブル一社のみが応募し受注に至ります。ワンテーブルは、事前にDMMグループ傘下の救急車ベンチャー「ベルリング」と業務提携を結んでいて、最終的に「DMMグループ(寄付)→国見町(受入)→ワンテーブル(受注)→ベルリング/DMMグループ(実働)」という、公金がぐるりと一巡する構図が完成しました。
このDMMというのは石川県の会社です。

企業版ふるさと納税は、法人税などから最大9割の税額控除が受けられるため、ほぼ公費に近いお金が使われることになります 。
横山さんが入手した10時間近い音声データには、ワンテーブルの元社長がこの仕組みについて
「超絶いいマネーロンダリング」であると公言し 、また地方議会を「雑魚だから言うこと聞け」、自治体職員を「バカ」だと見下し「うちが第2役場」だと豪語する発言が記録されていました。さらに、地方自治体を「誰も気にしない自治体だからいいんですよ」と呼び、やりたい放題の意図を明かしていました 。

この音声データの入手先についてはYouTubeでは明らかにされていませんし、本にも「X」として匿名での登場です。本では横山さんがXに対し
「こんな音声データをあなたが私に渡したら、だれが音声データをとれるかすぐわかって、Xさんの身に危険があるんじゃないか」
と心配されますと
「社長はどこでも同じようなことを平気で言っていたので問題ない」
とのことでした。

~自治体側の責任と機能不全~
横山さんは、こうした事態を引き起こした責任について、コンサル会社だけでなく「自治体側の問題の方が実は大きい」と強調しています。
役場側が事業の妥当性を深く検証せず、公金を使っているという意識が曖昧になり、コンサル会社による他者排除の仕組みに加担していた点を批判しています 。

これについては私もこれらのYouTubeを見ながら、議会は機能しなかったんだろうか、こういうことのために議会があるんじゃないか、という疑問はかなり抱きました。

自治体のチェック機能が麻痺している背景には、少子高齢化による地域社会の疲弊があります。国見町では、町議会が2回連続で無投票・定員割れを起こすなど、行政の担い手やチェックする側の地元人材が枯渇しています 。
中央政府や首長のオーダーに追われる中で、現場が手一杯になり様々な事業の「外注」が常態化。その結果、公金の意識が薄れ、行政の感覚が麻痺していったと横山さんは分析しています。

~地方自治の未来に向けた提言~
横山さんは、報道によって読者から「新聞が楽しみ」「負けるな」といった強い共感と応援を得られたことは、地方のニュースを伝えることの重要性を再認識させられたとおっしゃっていました。

今後の地方創生については、成功の定義を皆で議論し、
「夢を見てる暇があったら現実を見た方がいい」
と主張しています。

なかなか厳しい意見ですが、その通りだと思います。

人口が半減するという避けられない未来を見据え、何を維持し、何を幸せとするのかを地域住民自らが考え、そこから逆算して行動するべきだと訴えていらっしゃいました。
そして、地方自治が今後進むべき方向性を示す事例として、北海道むかわ町での取材経験を挙げました。
その地域の一住民は、コンサルタント会社に頼るのではなく、古いからすぐ壊すとかではなく、新しいものを建てずに、自分たちで
「今あるもののさびれ方をちゃんと考えて愛されて遺されるような町」
にしたいと語ったといいます。
横山さんは、この「さびれ方」を自分たちで考えるという姿勢こそが、外からの安易なスキームに頼らない、本来あるべき地方創生の鍵であると締めくくりました。

~おわりに~
ここまで書き起こしてご紹介しましたが、本当はこの100倍くらい興味深い内容が綿密に取材して書いてあり、最初に申し上げた通り、
「全部読みたい!」
気持ちでいっぱいです。
みな様ぜひ本をお買い求めになってお読みください。

参考にしたYouTubeチャンネル
↓積読チャンネル
https://youtu.be/PykrNPpH8QM?si=OtkBuuXnZBI4kkgp
↓ニュースの争点公式チャンネル
https://youtu.be/y_5szIiVFW8?si=UvPxHO1jG-MvnLxm
↓文藝春秋PLUS 公式チャンネル
https://youtu.be/aCFq7yQ3xn4?si=2IfI-sWXi1jbq1q-
↓Fラン大学就職チャンネル
https://youtu.be/4RilC3QOILw?si=ANhvrNtjsGIejyLE


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