作曲家・ピアニスト雁部一浩さんのこと(伊福部昭「サハリン島先住民の3つの揺籃歌」その7)2024年8月22日(木) 

突然雁部一浩さんのお話を始めます。
このお話はこのブログ内の
伊福部昭「サハリン島先住民の3つの揺籃歌」(その1~その6)
シリーズをお読みになってからお読みいただきますよう、お願いいたします。ですから、それに関する説明は割愛させていただきます。
(このブログは 伊福部昭「サハリン島先住民の3つの揺籃歌」その7 として書きます)

<チケットノルマ>
2024年9月12日の音楽の友ホール「日本歌曲シリーズ」に出演させていただけるのはとても嬉しいのですが、チケットをどうするかが大問題。何しろ演奏するのはあまりにマニアックな伊福部作品。しかも私が存じ上げる関東在住の知人・友人は半分が音楽関係者ではあるものの、同じ日に出演される清水さん、原田さんと明らかにお誘いできる方が被っています。もう半分の音楽関係者ではない皆さんに伊福部昭、とても買ってくださいとは言えません。














そこで今回はもう覚悟を決めて、私のノルマ全部、ご招待にしようと決めました。決めてしまえばあとは簡単。その旨を正直に書いたラインやメールを思いつく限りの皆さんに送信しました。こんな内容です。

大変ご無沙汰しております。西野真理です。
石川県は元日に大きな地震に見舞われ、我が家も大きく揺れました。しかし幸い1日断水しただけでそれ以上の被害はありませんでした。しかし、我が家からほんの車で5分くらいのところはニュースではあまり報道されない液状化。今もほぼ手つかずでお住まいになれない方がたくさんいらっしゃるという、同じ地域でも大きく違った状況です。

さて、そんな中話は全く変わり、コンサートへご招待差し上げたいというご案内です。
9月12日(水)東京・神楽坂・音楽の友ホールの「日本歌曲シリーズ」に久しぶりに出演させていただけることになりました。今回の曲はとてもマニアック。あのゴジラの伊福部昭作曲の作品を歌わせていただきます。
ご想像のとおり、そもそも関東にお誘いする方も少なく、しかも曲は相当マニアックなもの。私としてはとにかくご来場いただいて、そのマニアな作品に触れていただきたいという一心です。ただ、マニアックではありますが、なかなか面白く、意外にお楽しみいただけるのでは?と今日のメールを差し上げることにいたしました。
もしおいで頂けるようでしたら、そしてお友達もお誘いいただけるようでしたらお友達の分も含めて無料ご招待させていただきます。ご都合をおつけいただけるようでしたらぜひおねがいいたします。
ここ数年、YouTubeやブログもはじめそちらをご覧にただけると、伊福部昭出演オファーの事情等もお読みいただけます。
暑い日が続きますが、どうぞご自愛くださいませ。

思い付いたとはいえ、このシリーズには6年お声掛けいただいていなかったので、一番最近でも6年前にしかご連絡していないわけです。ですからお相手の方が私を覚えてくださっているかも不安。そもそもお知り合いと言うにはあまりに強引。例えば

Oさん・・・教員時代、連合の役をお引き受けしていた時、東京の会議に出席。その会議の時、連合の冊子を作っていらっしゃる編集者の方からインタビューを受け、名刺交換。その編集者がOさん。その後なぜだかもう一度お会いして、という程度のお知り合い。

Mさん・・・中学時代の同級生のお姉さん。高校の同窓生で関東の高校同窓会の会長さん。その同窓会に歌手としてお招きいただいて1~2度音友シリーズに来ていただいてはいるものの、それほどご連絡しているわけでもありません。

Kさん・・・私が勝手に文章の師匠と決めている方。文章をほぼ毎日KさんのFacebookで読ませていただいるだけで、あとはMさんと同様。そもそも直接お会いしたのは2度?

というように西野真理の勝手な「お知り合いリスト」に入れられた皆様。それでも幸先よくすぐにOさん、Mさん、Sさんから2枚ずつチケットご希望の返信をいただき、随分心が楽になりました。
その後事情をよくわかってくださっている歌手の恵さん、ピアニストの寿美さんにはご購入いただいたり、「行きます!」の連絡を頂いたりでノルマ分まであと少しになりました。
(<後日談>結局全ノルマ分お誘いでき、そのため、お誘いした中でまだお返事を頂いていない方には、お断りすることになりました)

<雁部一浩さんご招待という閃き>
せっかくなので、あと少しも残さずどなたかに来ていただきたい。でもこれ以上もうお声掛けする方を思いつきません。
・・・あ!雁部さん。

<雁部さんとお知り合いになった経緯・・・ここ、長いです>
お話は2000年、なんと24年前に遡ります。
そんなに昔のことなのにちゃんと書けます。理由はそのことを過去にエッセに書いていたから。それではその時のエッセイを貼り付けます。(文体がこのブログとは違います)

2年後のプレゼント

増位禎紀様

突然のお便り、失礼いたします。
昨日(2000.5.3)金沢市内のCDショップで数枚のCDを購入いたしました。ブラ-ムスの歌曲を探しに出かけ、あまり数はなかったのでごく有名な1枚を購入し帰ろうとしたところ、なぜか「輸入版」のコ-ナ-で貴CDを発見(?)し、大変失礼ですが、お名前等全く存じ上げず
「たまにこういうのを買ってみるとおもしろいかも」
という軽い気持ちで購入を決め帰宅しました。
今朝(2000.5.4)
「昨日のを聴いてみようかな」
と、正直なところ冷やかし的な気持ちでCDのスイッチを入れました。
その瞬間の驚きが、今私に、今までCDを購入した時に書いたことのない感想文(?)を書かせています。
品性ある発声、無理、無駄のない音楽の流れ、美しいドイツ語の発音、ピアノとのアンサンブルのすばらしさ(駆け引き、バランス)など、私が今まで聴かせていただいた(そんなにたくさんではありませんが....)一流と言われる演奏家の方々と全く同等、またはそれ以上に感じました。
「一体どういう方々が演奏されているのか」
と、CDのあちこちを見せていただきましたが、詳しいプロフィ-ルも連絡先も判らず、まだ朝の8時過ぎでしたが気持ちが抑えきれず、ケンレコ-ドさんにお電話し、連絡先をお聞きしました。ケンレコ-ドのご主人(?)も連休の朝早くかかってきた妙な電話に親切にお答えいただき、大変ありがたく思っております。
またCDを発売される、演奏されることなどありましたら、ぜひ聴かせていただきたいと思っております。
どうぞお元気で、ますますご活躍されることをお祈りしております。                              
        2000年 5月4日 西野真理

お読みいただいておわかりのように、2年前、上記のファンレタ-をCDの演奏者お二人(歌手の増位さんとピアニストの雁部さん)にお送りした。すると数日後、ピアニストの雁部さんから直接お電話をいただき、私は狂喜した。あまりの嬉しさに、私はその事を音楽関係の友人に話したり、学校で生徒に自慢したりしたが、2年たった今、それを人に話すことはなくなっていた。

それが今日!(2002年7月13日土曜日)
郵便受けに見知らぬ人から厚めの郵便物が届いていた。誰だか判らないまま中をあけて、同封の手紙を読むと・・・(以下その全文。改行等原文のまま)


西野真理様
鬱陶しい梅雨が明け、炎暑の候となりました。
二年前の「こどもの日」にお便りをいただき
ながら当方に若干の手違いがあった為、返事が
異常に遅れ誠に申しわけ御座居ません。拙演の
ブラ-ムス歌曲集については、過分のご評価を
賜り、大変恐縮しております。お礼とお詫びを
兼ね、先月刊行の「愛唱歌」をお贈り致します
のでご笑納いただければ幸甚です。歌唱の方は
あまり良い出来栄ではありませんが、チェロや
オ-ボエの助奏、ギタ-伴奏のシュ-ベルト等、
一応聞くには退屈しない内容になっております。
なお、平成十年に刊行の「ドイツ歌曲名曲選」
四年も前の録音ですが御所望の節はご遠慮なく
お申し越し下さい。僭越ながら一枚寄贈させて
頂きたく存じます。では宜しくお願い致します。
健康にご留意の上、長い夏を乗り切って下さい。

文月十一日  孤狐悃吉(増位禎紀)恐惶謹呈

このお手紙の最後に、メ-ルアドレスを書いて下さっていたので、私はいただいたCDをバックミュ-ジックにしながら、夢中で増位さんにメ-ルを打った。
今回のCDもそれは素晴らしいもので、しばしばメ-ルを打つ手を安め聴き入ってしまった。(申しわけありませんが、演奏の素晴らしさを文章で表すことはできません。興味をお持ちの方はご一報下さい。CDお貸しします。)

一気に結論に飛ぶが、このCD、2000年から2001年にかけて録音されたのだが、なんと、増位さん74~75歳の演奏なのである!
 ・・・・・・・ちょっとくやしい。

後日談
増位さんとはその後、時々メ-ルのやり取りをしている。とっても楽しい文章を送ってくださるのだが、読めない漢字がいっぱい使ってあって、半分くらい勘で読んでいる。

これが西野真理が雁部さんとお知り合いになったきっかけです。
しかし、おわかりのように、私は雁部さんとお電話でこの時一度、その後増位さんがお亡くなりになった時に1度やはり電話でお話したきりで、お会いしたことはありません。お知り合いに含めるのは図々しいとしか言いようがありません。

<雁部さんからのお電話>
来てくださることはまあないだろうと思いながらお出ししたお手紙。
しかし、お手紙が届いたと思われる数日後の8月16日、雁部さんからお電話をいただき
「ぜひ妻と伺わせてください」
奥様が同日ご出演のソプラノ歌手・亀田真由美さんとお知り合いだったのです。どこに幸運があるか、どこにどんなつながりがあるか、世の中本当にわかりません。
この時のお電話では、あのときのCDのこと、雁部さんの著書「ピアノの知識と演奏」のことなど話題は尽きず、30分以上の長電話になりました。

「ピアノの知識と演奏」
私はピアノは苦手です。それでもこの本は「技術」という意味で普遍的な内容で、ピアニスト以外の方にもおすすめ。私は「歌手」としてこの本を読ませていただきました。

そしてお電話の最後に
「バイオリニストの奥村智洋さんとのCDをお送りします」

<CD「ロマン主義へのオマージュ」>
8月22日、CDが届きました。




























全部いいです。
このCDはバイオリンで歌曲のメロディーを演奏されたものがたくさん収録されています。
私は今後、これに収録されている歌曲をほぼ全部訳すつもりです。

<写真集>
2000年に雁部さんから頂いた歌曲集














出会いのもとになった、輸入盤コーナーに紛れ込んでいたCD














その後増位さんから頂いたCD
全部おすすめです




































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