八ヶ岳声楽セミナー発表コンサート出演と、翌日の呉先生との面会 2023年9月21日(木)

 八ヶ岳声楽セミナー発表コンサート出演と、翌日の呉先生との面会(長文です)

<この計画は2023年4月6日(木)にスタート>
2023年4月6日にこの計画はひらめきました。
2023年3月末に行われた八ヶ岳声楽セミナー。
その終了パーティーのとき、主催者の堀内さんから
「このセミナーの発表会を東京・音楽の友ホールでやろうと思ってます。もちろん強制じゃないから。追って日程等はお知らせします」

そのお知らせが4月6日にありました。
「9月20日(水)開催決定」
これを知った途端
「翌日は呉先生のお見舞いへ行こう」
そしてこの密かな計画を、ピアニストの小林美智さんにも伝えました。

<呉先生のこと>
私達、呉先生に師事しているメンバーはみんな呉先生のことを
「世界一のアンサンブルピアニスト」
と思っています。(聞いたわけではありませんが、多分)
もちろんアンサンブルだけがお上手なわけではなくソロだってスペシャリスト。でもソロピアノのスペシャリストはたくさんいらしても、アンサンブルも、となるとなかなか。そして私も美智さんもそんな先生に教えを乞うメンバーの一員でした。
その呉先生が2019年末、福岡のコンサートステージ上で倒れられ、右半身麻痺。

2019年末といえば新型コロナウイルス禍直前。
私は幸い2020年2月、規制の強まる直前に1度、先生のお見舞いに行くことができましたが(その時のことは別エッセイに詳しく書いてあります)、その後全国の学校も休校になるなど規制強化のため、ほとんどのレッスンメンバーは先生とお会いできないまま3年が経ちました。もちろん私もその一度きり。

2023年5月、コロナ禍による規制が緩和。
「お見舞いに行けるかも?」
そこで先生の滞在施設に電話で確認したところ
「お見舞いはできるが、お見舞いの時間は限られていて、その時間を誰かが使うと、ご家族の面会時間が削られることになる」
というようなご返答でした。
まずはご家族に許可をいただくことが必要です。
また、先生のお見舞い先・東京へは新幹線で2時間半とは言え、そう頻繁に行けるわけではありません。でも、何かとセットにすれば精神的に楽に行ける気がします。まさにこのコンサートはそのチャンス。
このコンサートへの出演を決めたのは、半分以上呉先生のお見舞いという目的があったからです。

<小林美智さんとの計画>
美智さんには「詩人の恋 西野真理日本語訳詩版」YouTubeアップ用のカラピアノ制作をお願いしていました。このことの詳細は別のブログにありますが、美智さんへの依頼のきっかけは
「『詩人の恋』を自分で日本語訳詩したものを歌おうと思っている」
と雑談混じりに美智さんに話ししたところ、間髪を入れず
「はい、私やります」
と言ってくださったからです。
いよいよ訳詩が完成し、YouTubeアップを目ざして練習を進めるうち
「これはまずYouTubeにアップするんじゃなくて、先にコンサートをすべきだ」
と思い始め、美智さんに日時全く未定のままコンサートのピアニストをお願いしました。
しかも、以下ようなとんでもない条件で。

・場所は本町コミュニテイーセンター(いわゆる公民館的な場所)
・ピアノは電子ピアノ
オペラ歌手・関定子の本番のピアノを任されているピアニストに対してあんまりだと思いつつお願いしてみたところ、ご快諾!

<人生コンサート100回計画>
話は少し遡ります。
2022年11月19日に開催した還暦・退職記念第25回美女コンサート。
このコンサートは2000年から始め2019年までに24回開催してきました。しかしコロナ禍のため3年間中断。
そんな中2022年2月に還暦を迎え、3月には中学校を定年退職。
「『還暦・退職記念』という言葉を使えるのは今年だけ。それにこのままコンサートを中断していたら、ずっとしなくなる」
と8月19日に急に思い立って、コンサート会場・西田幾多郎記念哲学館を予約しに行くことにしました。西田幾多郎記念哲学館は3ヶ月前からしか予約できないので、思い立ったこの日の3か月後、11月19日開催にしたのです。

今からプログラムを考えてピアニストにお願いは無理。
でもやるのです。
方法?
あります!
この3年間、ピアニストのみなさんにYouTubeアップ用にお願いしたカラピアノでコンサートをすればいい。

そこでカラピアノを依頼したピアニストの皆様にご了解をいただき、「カラピアノでのコンサート」を急遽計画・準備そして無事終了しました。
そんなコンサートのステージ上から、ただの思いつきでこんな宣言をしました。
「人生100回コンサートします」
人生100回となると、1年に1回じゃ無理。1年に6回やれば74歳で100回です。
しかし、例えカラピアノだとしても、毎回西田幾多郎記念哲学館で開催していたら経済的破綻は目に見えています。第一毎回確実に予約できるとは限らず、そのことにヤキモキしていたらコンサートどころではありません。

そこで考えたのが歌の会「Sing幾多郎」を開催しているピアノのない本町コミュニティーセンターで奇数月に開催するという方法です。もちろんカラピアノで。
最初は「詩人の恋」もその一つとして計画していました。
でもこれはピアニストに生で弾いて頂きたい。
そこで美智さんにお願いし相談の結果、
「それなら今年中に」
ということになり11月12日(日)本町コミュニティーセンターでの開催が決まり、私の中で「詩人の恋」本番への準備が進み始めました。

<でも・・・>
練習を進めるうち
「これ、コミュニティーセンターで電子ピアノはあんまりじゃないかなあ・・・でも仕方ないし・・・」
と悩み始めました。
そこで、抽選漏れ覚悟で3ヶ月前に申し込んでみることにしました。美智さんにはコミュニティーセンターでご了解いただいているので、良い場所に変わるのなら問題ないでしょう。

<西田幾多郎記念哲学館申し込み>
8月12日(土)、3ヶ月前です。
書類を提出しておしまい・・・ではなく、書類の日付が間違っていたのと、はんこを忘れたのとで家に帰りました。家まで3分。近いっていいなあ。
再び哲学館を訪れ提出終了。
翌日朝、哲学館に電話しました。
「昨日11月の会場申し込みをした西野です。会場はお借りできますか?」
「・・・というと?」
「どなたか他にお申し込みがあって抽選とか・・・」
「それはありません。これから審査に入ります」
審査があるんですね。
とにかく抽選漏れということはないことははっきりしたので、ほぼ西田幾多郎記念哲学館開催決定ということ・・・でいいでしょう\(^o^)/

<9月21日(木)お見舞計画>
哲学館のことと並行して、9月20日の音楽の友ホール本番、そして翌日の呉先生お見舞い計画です。
なぜ並行なのか意味がおわかりにならないでしょう。
ピアニストの小林美智さんは
・呉先生のレッスンメンバー
・八ヶ岳声楽セミナーのアシスタントピアニスト
・西野真理「詩人の恋」ピアニスト
・八ヶ岳声楽セミナー発表会西野真理のピアニスト
と、西野真理と一緒に呉先生のお見舞いに伺う条件がすべて揃っているのです。
美智さんに電話し、発表会からお見舞いまでの一連の行動について話し、
「なによりご家族へ許可をいただくことが第一」
と、呉先生の弟さんにお電話しました。

弟さんによると、私が以前電話で問い合わせたときより施設側の規制は少し緩和されていましたが
・面会は1回1時間、朝10時、午後1時、2時、3時
・食べ物の持ち込み不可
・マスク着用
・予約が入るとその予約が終わってからしか次の予約を入れられない
ということでしたが、弟さんは私が石川県からということでとてもご配慮くださり、こちらの希望を優先し9月21日(木)午前10時に予約を入れてくださいました。
お見舞いが午前になったので、その後東京の練習会場を借りて「詩人の恋」の合わせもしてしまうことになり、色々な準備が整っていきました。
そして私にはもう一つ、思うことがありました。
先生のお部屋には電子ピアノがあるらしいことを弟さんとの電話で知り
「先生に『詩人の恋』のレッスンをして欲しい!お菓子や物品はお見舞いとしてお持ちできないからお見舞いは現金でお渡しすることになるけれど、お見舞いのお金ではなく、レッスン代としてお渡ししたい」
と考えました。
(行ってみるとピアノは電子ピアノではなく小さなキーボードで、お部屋ではなく共用スペースでした)

<御見舞…レッスンを受けに>
9月20日(水)東京・音楽の友ホールで八ヶ岳声楽セミナー発表会。
(関定子先生のFacebookより。西野真理は右端、その隣の黒いドレスが美智さん)











小林親子と。
お二人とは打ち上げ後二次会へも。














そして翌日の今日・9月21日(木)は呉先生のお見舞い…レッスンを受けに行く日です。
ホテルで目を覚ましてからチェックアウト時間までなんとなくソワソワしながら過ごし、ホテル前からタクシーに乗って、先生のいらっしゃる施設へ向かいました。
一緒に行く美智さんとは現地集合。
私が一足先に着き、間もなく美智さんも到着。そして面会予約のため連絡を差し上げた弟さんも来て下さいました。














弟さんとお会いしてすぐ、弟さんから
「今日は姉の誕生日なんですよ!」
なんという幸運でしょう。

受付で健康状態や連絡先を記入し、いよいよ10時、1時間の時間制限付き面会です。
美智さんとの計画通り、先生とお会いしてすぐに
「先生、今日は二人でレッスンを受けに来ました。今度二人で『詩人の恋』をコンサートで演奏するので」
と、封筒に
「レッスン謝礼」
と書いたものをお渡ししました。

※美智さんから
「レッスンしてください!」というといつもの先生の目になった!そして私たちに何かを伝えたい!という昔から変わらない強い思いがあふれていると感じた

美智さんは
「わたし、ソロも弾くんです!」
と先生に報告。『詩人の恋』コンサートは美智さんのピアノ・ソロでスタートなのです。

※美智さんから
「コンサートでソロも弾きます!」って言ったら、先生すぐに満面の笑みで答えてくださった!あの笑顔😍嬉しかった〜❤️頑張ります(頑張る) 

そして
「二人からお誕生日のお祝いです」
と、来年の手帳をプレゼントしました。先生の好きだったムーミンに出てくる「ミー」の絵の手帳です。
買う時は、まさかこれが誕生日プレゼントになるとは思ってもいませんでした。

ここで正直に書きますと、2020年2月22日にお伺いしたときより、はるかにピアノは弾けなくなっていらっしゃいました。コロナさえなければもっと色々な方の音楽的な刺激もあったはずなのにと、悔しくてなりません。
また、弟さんにお聞きしたところ、最初の入院後、脳の病気や喘息の悪化もあり、複合的に機能が落ちてしまったらしいとのことです。現在、鼻に酸素を送り込みながらの生活です。

※美智さんから
先生をひと目見て、私が思った以上に呉先生は呉先生だった(お会いするまでは、全然違う先生になっておられるんではないかという怖さを持っていたと思います)
 
さて、レッスンですが、美智さんと私で11月のコンサートで演奏する「詩人の恋」をみていただきました。
共用スペースにある小さなキーボードの前に座ると、先生は自分でスイッチを入れ、音量を調節し、楽譜を見て弾き始めてくださいました。私達は
「先生に左手、美智さんが右手を弾いて曲の感じを教えていただこう」
と考えていたのですが、先生は左手で全部を弾こうとしてくださいました。まだまだ意欲は残っていると感じました。
また、あの頃のように、独特の高い声でメロディーを歌おうとしてくださる場面もあって、とても嬉しくなりました。ただ、体力が続かなくて、休み休みという感じです。

※美智さんから
先生が思った以上に大きな良い声で歌ってくださったこと(先生は絶対音感を持っておられるはずで、途切れ途切れだけど私にはちゃんとその音程を出しておられるように聞こえた)

途中、一旦お部屋に帰ろうと促されたので(弟さんの判断、私たちにはそこまで理解できませんでした)ご一緒すると、先生は私達にタンスに隠していたと思われるちょっとした駄菓子をくださいました。














弟さんは
「これはどうやって手に入れたんだろう?」
と笑っていらっしゃいました。食事制限があって、どうやらこれらは食べてはいけないもののようです。でも、先生はそれを
「あの二人が来た時渡そう」
と、用意してくださっていたのですね。
相変わらずのお茶目さに触れて、幸せな気持ちになりました。
その後再度先程のキーボードの前に戻って、レッスンの続きです。
先生は途中からマスクを外し、なんだか気合が入ってきました。

※美智さんから
楽譜を見て弾いておられると、いつの間にかシャープ系の長調になる!明るい曲がお好きなんやなぁと思いました。

ピアノをスラスラと弾いて下さることは残念ながらありませんでしたが、先生のパワーはたっぷり頂き、その後、池袋のスタジオで合わせをしたのですが、私も美智さんもとてものっていたように思います。先生とお会いできたことこそ何よりのレッスンだったと思います。

面会は1時間。残念ですがお別れです。
玄関で
「ハッピーバースデー」
を歌うと、先生もはっきりと一緒に歌ってくださいました。
先生も私達も、お互い見えなくなるまで手を振りました。


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