それは開催3日前から始まっていました。
お世話してくださっているOさん(80歳)からのお電話。
「西野先生、当日はどういたしましょう。10時からでも10時半からでも。場所も公民館でも本町コミュニティセンターでも」
この年齢の方はきっとこのようにアバウトに、相手の都合に合わせてあげることが親切だと思っていらっしゃるのですね。とんでもありません。最初にボランティアをお引き受けしたときのお約束どおりに進めましょう。西野真理、きっぱり言いました。
「あのね、Oさん、最初にお約束したとおりに進めましょうよ。10時から公民館で」
「わかりました。それじゃ、公民館、何時に開けておけばよろしいでしょう」
あ~これもね、例えば、どうしても9時50分にしか開けられないから何とかそれでお願いします、ならわかるんですよ。そうじゃないでしょ。そちらで決めてくださらないと。
「Oさん、それもね、私が10時に歌い始められるようにそちらで準備していただいて、私はそこで歌い始められるような段取りで時間を設定しますから」
・・・という具合に、どんどんはっきり言ってしまったことで、勢いがついてしまいました。10月22日10時から30分間老人会会合時のボランティアコンサート。
当日。
9時10分に行ってみると、お世話くださる方4人で思ったよりもてきぱきと準備が進められていて一安心。
私の必要物をセッティングして、あとはドレスにティアラ、大きな指輪で出番を待つだけ。
場所は公民館の玄関を入った狭いロビー。私には十分な広さ。
↓今回写真を撮るのを忘れました。これは昨年のクリスマスボランティアコンサートの時の写真。今回はもう少し椅子が詰まっていました。
お客様は老人会のおば様20名。美女コンより多い!ありがとうございます。
歌う曲は20曲以上用意していきました。でもきっと皆さん、ただ聞いているだけより、ご自身がお歌いになりたいだろうと、歌詞カードも準備して臨み、その予想は的中。「虫の声」を歌った時点で、口を動かしていらっしゃる方が多数。これは、私が歌っている場合じゃないと思い、さっさと「みんなで歌いましょう」へ路線変更。
では毒舌ステージの始まりです。
まずは自己紹介。
・山口県から23歳の時にこちらへ来たこと
・教員をやりながら歌を歌っても、誰にも聞いてもらえないこと
・箔をつけるためにコンクールを受け始めたけれど落ち続けたこと
・やっと上位に入賞しても、そうなってみるとそんな人はいっぱいいて、やはり自分に出番はない。自分でやるしかない
・大きなホールを借りて、ピアニストを呼んでコンサートしていたら経済的に大変なので、コミュニティセンターでコンサートを始めたこと
・人生100回のコンサートをする予定。このままいけば、74歳で100回になる。ぜひ100回まで毎回来てほしい
喋り方がうまいので(!)、この程度でも結構ウケます。
「じゃあ、皆さん、歌ってみましょう。『虫の声』」(歌詞カード配る)
以下、「」省略
・だめだめ、まずしっかり声出して
・人が歌ったら歌おうなんて根性じゃだめ
・ばばあ声出してたら喉はきたえられませんよ。歌は「喉の陸上部」
・もっと笑顔で歌わないと、ばばあ顔で歌っていたらいい声は出ません
・だいぶいい声になって来たじゃないですか
・下向かない。「あれマツムシが鳴いている」くらい覚えられない脳みそじゃないでしょう
・私が歌詞を先に言ってるのを聞きながら、ピアノ伴奏を聞きながら、声も出すって、結構な脳トレ、頑張りましょう
・歌を歌うと喉が鍛えられて、誤嚥も防げます
「じゃあ次、『もみじ』」
・顔がずいぶんよくなってきました。20歳は若くなりましたよ
・子どものころ、おばさんっていつも不機嫌に見えてましたけど、あれ、不機嫌じゃなかったんですね。顔の筋肉が緩んでるんですね。意識して頬骨上げないと。そんな顔してたら若い人に嫌われますよ
ここでちょっと「蛍の光」「祝歌」などの解説。
また毒舌。
・よく老人は「もうすぐ死ぬから」とか「棺桶に片足突っ込んでる」とか言うでしょう?あれ、迷惑なんですよ。どう答えたらいいかわからないですから。その点、私のおじいちゃん、100歳で元気に亡くなったんですけどね、そのおじいちゃんこんなこと言ってました。
「わしは、明後日死ぬ」
明後日死ぬっていいでしょう!今日死ぬは困るし、明日死ぬも忙しい。でも明後日ならちょっと余裕があります。明日になったらまた明後日って言えばいいんです
「ふるさと」
・年寄りはすぐテンポを勝手に遅くする!それだめ、年よりくさくて。ちゃんとリズムに乗って。ピアノも聞いて
ここで質問の手が上がりました。近所にお住いのお金持ちのおば様です。
「コンサートのことなんですけど、75歳以上は割引とかないんですか?」
「ありません、払ってください。棺桶にお金持って入れませんよ。何ならコンサート入場料に貢物も添えてきてください」
言いませんでしたけど、お金持ってる人がお金をちゃんと使える世の中にしなくちゃって、いつも思います。老人ってお金ないイメージに勝手にしてますけど、持ってる人はいっぱい持ってるんだから、そういう人は使わなくちゃ。特に「もの」じゃなくて、それこそコンサートみたいに形じゃないものに使ってほしい。
「今度老人会でバス旅行あるんですよね。ちょどその日、私のコンサートなんです。ぜひバス旅行はやめて、コンサートに来てください。・・・まあそれは無理でしょうから、その次、2026年の1月3日です。1月3日って暇じゃないですか?毎年1月は3日って決めてますから、みなさん毎年1月3日は西野真理のコンサートに行くってお正月の恒例行事にしてくださいね」
まだほかにも毒を吐きまくった気がしますけど、覚えてません。でも皆さん終始楽しそうにしてくださっていたので、このボランティアは成功と言っていいでしょう。
「それでは今日はこの辺で」
と帰ろうとすると
「アンコールを」
と言っていただいたので、そうそう、大事な曲忘れてましたよ!「防災の歌」。アンコールって言ってもらえてよかった。
「私、防災士の資格とったんです。しかも、満点合格で。その時、何か記念にと思って『防災の歌』を作詞作曲しました。今日は皆さんに覚えて帰っていただきましょう」
歌詞カードを配り、皆さんで楽しく歌ってお開きになりました。
帰りにSさんから
「西野さんのコンサート大好きなんです。特におしゃべりが」
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