混声3部合唱の男声パート(主にテノールやバス)を女性が1オクターブ下げて歌うのが「気持ち悪い」と感じる主な理由は、音域の違いによる声の響きや音色の不自然さ、そして倍音構成の変化にあります。
これは、単に音の高さが変わるだけでなく、声の**質(ティンバー)**が合唱全体の中で浮いてしまうためです。
1. 音色の不自然さと倍音構成
女性の低い音域と音色
女性が通常の発声で出すことのない極端に低い音域で歌うと、声帯の振動パターンや声の共鳴の仕方が変化します。
声の響きの変化:
女性が通常の声域から1オクターブ下げる、つまり男声パートの指定音域で歌うと、その音域は女性の声帯にとっては無理のある低い音域になることが多いです。
結果として、声の響きが通常女性が出す声とはかけ離れた、無理に響かせたような「こもった」り、「太すぎる」、あるいは**「張りのない」**音色になりがちです。
倍音構成の変化:
声の音色は、基本となる周波数とその**整数倍の周波数(倍音)**の構成によって決まります。
女性が1オクターブ下げて歌うと、基本周波数が男性のパートと同じくらいに低くなります。しかし、声帯の長さや咽頭・口腔の共鳴腔の大きさは女性のままであるため、発生する倍音の構成や、特に高次倍音の出方が、同じ音高の男性の声や、女性の普通の音域の声とは大きく異なってしまいます。
この不自然な倍音構成が、聴覚に**「異物感」や「気持ち悪さ」**として認識されやすいのです。
2. 合唱における声の役割と不適合
混声合唱では、各パートが特定の音域と音色をもってブレンドされることが求められます。
男声パートの響き:
合唱におけるテノールやバスは、声の重さや響きの豊かさで曲の土台や内声の厚みを担います。
男性の声帯は長く、声の共鳴腔(喉や口)も大きいため、同じ音高でも重厚で豊かな低音を自然に出せます。
「異物」としての浮き:
女性が無理に1オクターブ下げた声は、本来の男声パートの重厚な音色や合唱の響きに求められる倍音を持たないため、他のパートの響きの中に不自然に混ざってしまい、全体として調和を乱しているように聞こえます。
特に、ソプラノ、メゾソプラノ(またはアルト)、そしてこの不自然な低音という構成になった時、女性の本来の音域と無理に下げた音域との間で音色のギャップが大きくなり、「気持ち悪い」と感じる不協和な印象を与えやすくなります。
補足: 聴覚の違和感
聴覚は、ある音が**「誰の声で、どのような響きで」鳴っているかという情報も無意識に処理しています。女性の声が不自然な低音域で響くと、脳が音高は合っているのに音色や声の主との間に矛盾**を感じ、「気持ち悪い」「不快」といった感覚につながることがあります。
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