担任をしているA君に多少(多か少かはっきりしてくれと言われれば多)問題があったため、保護者に来校願いのお電話をした。18時ころ来ていただけるというので帰りHRでA君に
「お母さんとあなたと先生とでお話しするけど、お母さんがいらっしゃる前にあなたにもう一度事情を確認したいから18時10分前になったら職員室に来てね」
職員室で仕事をしながら待っていたが5分前になっても来ない。
18時になったが来ない。
「あれ?忘れて帰ったのかな?」
心配になって18時5分頃Aくんの所属している部活動の練習場所に行ってみると、A君は特に急ぐこともなく、通学カバンを持ってこちらへ来ようとしている。
私は少々ムッとして
「18時10分前に職員室に来てっていったよね」
と、A君に言った。するとA君は
「まだ10分になってませんよ」
「は?何言ってんの」
「だから、まだ10分前です」
「え?何言ってんの、18時10分前って言ったよね」
「だからまだ18時10分前です」
「だから……え!?あ!10分前ってあなた、18時10分のちょっと前だと思ってるの?」
「そうです」
A君はきっぱり言った。
私は驚いたような腹が立ったような戸惑ったようなよくわからない感じになって、でもひょっとしたら私が間違ってるんじゃないかと、いつになくすばやく反省して
「18時10分前って、あなたは18時10分の何分か前って解釈したわけね。私が悪かったような気がする。17時50分に来てって言えばよかったのね」
A君に謝ったものの驚きは結構大きく、しかも釈然としない感じが残っていて、三者面談の最後にこの件を話した。
「…10分前ってね、多分多くの人は18時の10分前って思って喋ってるわけ。例えば入試の日なんて先生はよく『7時10分前に高校の正門前集合ね』とか言うけど、それって7時8分頃のこと言ってるんじゃなくて6時50分のこと言ってるから、これ、覚えといたほうがいいよ」
どうやらお母さんは私と同じ解釈をしていらしたようで、私同様、驚いた様子だった。
帰宅して夕飯のとき、夫と息子にこのことを話すと、二人とも「18時10分前」といえば「17時50分」であると解釈していて安心した。
しかし息子が
「でもね、この『10分前解釈』ネット上で結構論争があって、『10分の少し前』って解釈の人、それなりにいるらしいよ」
と教えてくれて、またまた驚いた。自分の常識を疑った。
その後気になってネット検索してみると、検索の一番上になんと、
「NHK放送文化研究所」
の見解が出てきたではありませんか!
それをここに引用します。
「○時△分前」という言い方を放送では使わないという記述が、確認できる範囲内で1954(昭和29)年の気象用語の取り決めの中にすでに見られます。使わないという理由の一つに、誤解の恐れがあるからだということが挙げられます。
「9時10分前」は、大半の人は『8時50分』のことだと考えます。ところが、これ以外に『9時10分より少し前』(たとえば9時9分ごろ)という意味もありうるととらえる人が、少なからずいるのです。「9時前」というのが9時になる数分前のことを指すように、「9時10分前」も9時10分になる手前の時刻・時間帯を表すという考えによるものです。
この「9時10分前」をどう解釈するかについて、インターネットを使ってアンケートをしてみました。すると、「どのような場合でも『8時50分』のことだ(『9時9分ごろ』という解釈はおかしい)」という答えが過半数を占めました。いっぽうで、『9時9分ごろ』という解釈も認める回答(「文脈やイントネーションによってどちらの意味にもなるが、本来は『8時50分』という解釈が正しい」)は、特に若い年代を中心として決して少なくはありませんでした。また地域別には、四国ではこの回答が比較的多くなっています。(後略)
更に、別サイトをみたところ、日本人の約9%が18時10分前は18時8分頃のことだと解釈しているという。現在担任しているクラスが40人だから3~4人位はこの解釈をしていると考えられる。
今回の件は結構衝撃が大きかったので、三者面談の報告書の最後にこのことを書き添えた。
「…別件ですが、この面談の前にA君を職員室に『18時10分前に来て』と指示したところ、A君は18時10分の少し前だと解釈していて驚かされました。今後生徒に時間を指示する場合は『17時50分』としたほうが良いと思います」
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