2019年のエッセイ・実父、泉下の客となりました 2025年9月28日(日)

前ブログを書いた後、このブログに移行する前に紙媒体で出版した「美女エッセイPART17」掲載の「泉下の客となりました」を思い出したので、こちらに貼り付けます。こちらは現在のものと文体が異なります。

泉下の客となりました(2019年7月)

<はじめに>

この言葉を見てすぐになんのことかおわかりになった方は、私の知識基準で言えば相当教養の高い方というか、語彙の豊富な方。

このエッセイは敢えてこの言葉の直接的説明をせずに進めていきます。

<7月6日>

父が泉下の客となったのは2019年7月6日の深夜。入浴中の事故。

書けばきりがないが、88歳、大きな事故にも遭わず、闘病生活をしたわけでもなく、まるで産湯に戻るように自宅のお風呂で最期を迎えることができたのは幸運なことであったと私は思っている。

<ベストチョイス・ベストタイミング>

2019年7月6日土曜日の朝6時に知らせを受けた私は、石川県から山口県までの電車の時間を調べようとして思い留まった。
「車で帰ろう!」
田舎にお住まいの方はよくおわかりのように、田舎にいたら車なしでは何もできない。私達家族が荷物を抱えて電車で帰っても、何も役に立たない。邪魔な大人がいるだけ。9時間かかるが、その後のことを考えると車で帰るのがベストだ。
実際、様々な要件のために車がどれほど役にたったかしれない。
本当に車で帰ってよかった。

また私はこの前日の金曜日、来週までに終えればいい仕事があったのだが
「今日のうちに全部やってしまおうかな」
となんとなく思って、私としては珍しく遅くまで(といっても他の人より随分早い)学校に残ってすべて終えて帰宅した。
後で聞くと、一緒に帰ってくれた娘もやはり、来週までに終えればいい仕事をたまたま早く終えてしまっていたと言っていた。

また、私は箏の授業のため他の中学校から箏を借りていて、それを日曜日に彼にワゴン車を運転してもらって返しに行こうと思っていた。しかしこの日、日課変更でたまたま朝の時間が空いた私が職員室で
「誰か、箏を返しに行くワゴン車出してくれないかなあ~」
と発した声に主幹の池島さんが
「ぼくの車出しますよ」
と神対応。金曜日のうちに箏を返しに行くことができていた。

土曜日に帰って日曜日が通夜、月曜日が葬儀。その後母の様々な手続きのために市役所や銀行に同行し、初七日まで済ませて帰宅。土日と土日を挟むことができたおかげで、連続9日のお休みをいただくことができた。

<通夜会場の本棚>

通夜は式場に母と泊まったが、その式場の小さな本棚にあった本をなんとなく読んでいると、興味深い考え方に目が止まった。
(この本が何という本だったか残念ながら忘れてしまった)
「・・・『ご不幸があった』という言い方をしますが、その人の一生の最期を『不幸』というのはあんまりじゃないでしょうか」
そう言われると本当にそうだ。
自分にもいつか訪れるその時を「不幸」って言われたくないな。

<リーフレット>

そんなことを思っていた葬儀後、実家にあったどこからか届いたリーフレットで見つけたのが

「泉下の人」

という記述。(確か姜尚中さんの短い文章だったと思います)
「そういう言い方もあるんだなあ~」
と思ってネット検索をしてみると
「泉下の客」
という言い方のほうが一般的なようだ。

~日本語大辞典より~
黄泉(こうせん)の下。死後、人の行くというところ。あの世。よみじ。冥途(めいど)。
※和漢朗詠(1018頃)下「長夜に君先づ去りんたり 残んの年我れ幾何(いくばく)ぞ 秋の風に襟(きぬのくび)涙に満つ 泉下に故人多し〈白居易〉」
※浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一「師直をほろぼし、君が泉下(センカ)の御恨をはらすべし」 〔新唐書‐李景譲伝〕

いい言葉を教えてもらったという気持ちになった。
産湯から出てまた水に帰っていくような感じ。
まさに今回の父だ。

<自慢話>

私のエッセイは基本的に読んで楽しんでいただきたいと思って書いているが、こういう話では少々難しい。難しいがそこを何とかするのがプロというものだ。(プロかな?)

少々不謹慎ではあるが、この事があったときから、これを文章にしなければならないだろうと思い続けていて、その材料を探しつつ一連の行事を過ごしていた。

その中で見つけた父の自慢話でこのエッセイを締めくくりたい。

葬儀会社から湯灌(お棺に入れる前にお風呂に入れてあげる)係の人が来てくださり、それも終わりお棺に入れ、お棺に上蓋を置いたときのこと。
「・・・あ~ちょっとつっかえますね・・・・・」
父はとても鼻筋の通ったなかなかのイケメンだった。
そのイケメンの中心・鼻が高すぎて、顔部分の透明なのぞき窓(?)のところに鼻があたっているのだ。
日本中であののぞき窓に鼻がつかえてしまった人は、父以外、そうたくさんはいないだろう。
今頃、泉下で自慢しているに違いない。

~両親の結婚式の写真~





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