<はじめに>
<「積水ハウスが地面師に騙されて55億円盗られた事件」のとっても簡単な説明>
今回参考にしたのはYouTube「ツッチのムビログ」さんのチャンネルとWikipediaです。
大手住宅会社・積水ハウスが地面師に騙されて55億5000万円騙し盗られました。事件の犯人は捕まっていますが、回収できたお金は10億円。30億円行方不明。
ネットフリックスの映画は、実際にあったノンフィクションの作品をフィクションを加えて映画化したもので、事件そのものを扱った本が森功さんの作品「地面師」(2018年12月刊行)、映画の原作となるのが新庄耕(しんじょうこう) さんの「地面師たち」( 2019年12月刊行)です。
<狙われた土地について>
今回狙われたのは山手線・五反田にある「海喜館(うみきかん)」という老舗の旅館。所有者はAさんという女性。
この旅館を始めたのはAさんのお父さん。そのお父さんは別の女性との間にも子どもができ、その女性とこの家を出ていきます。それ以降AさんとAさんのお母さんとでこの旅館を切り盛りします。1975年にAさんのお母さんが亡くなってからはAさん一人でこの旅館をやっていきます。
それ以降も旅館は収益を上げますが、次第に旅館も老朽化しますし、ビジネスホテルも台頭したこともあり2000年ころには経営が苦しくなります。
そんなころから不動産会社からの勧誘が増してきます。直接勧誘に来ることもあれば、旅館の宿泊客を装って勧誘されることもありました。しかし、Aさんはこの土地を絶対手放さないという強い気持ちを持っていましたので、そのような勧誘から身を守るために常連客しか宿泊させなくなりました。そして、ついに2015年旅館業を廃業することになりました。
<Aさんの土地>
Aさんの土地は地面師にとって
・持ち主が高齢
・持ち主に人付き合いがない
という絶好の標的。
<実際の事件>
この二人で、情報屋、手配師、口座作り、法律のこと、運転手、マネーロンダリング担当など様々な手配をします。
①最初にしたこと
旅館となりの月極駐車場との契約。この契約をすることでAさんの個人情報を入手します。
そして「融資詐欺」を行い、2億円を手に入れますが、高利貸しが絡んだため(このあたりYouTubeの説明では私にはよくわかりませんでしたが)4億円返済しなければならなくなってしまいました。そこで・・・
②土地売買詐欺へ
これを言い出したのがこの事件の主軸「カミンスカス操」と名乗る小山操。
その1ヶ月後、Aさんの知人と称する人物から、Aさんの土地に関する話が市場に出まわ始めます。
その話に乗ってっきたブローカーが「IKUTA ホールディングス株式会社」。
そして1週間後IKUTAホールディングスは実際に地面師たちと面接します。でもその時、
と説明され、IKUTA側は代理人からの偽の委任状を信用します。その代理人の一人が小山です。IKUTA側が騙されたのか最初から一枚噛んでいたのかは今もよくわかりません。
③犯人とIKUTAの契約
さらにその1週間後の2017年4月、ホテルのラウンジで地面師側は偽のAさんとその内縁の夫という人物、偽の弁護士まで用意してIKUTA側の弁護士と交渉が行われました。
そのことでIKUTAは契約し、その後はIKUTAを窓口として更に大きな会社とのやりとりになります。
※ブローカー・・・・取引の仲介を行う人や会社を指し、料金や手数料を受け取る
※デベロッパー・・・土地や街の開発事業者。メインは「土地の取得」「建築」「販売」
内田は最初この計画に引き気味でした。相手が積水と聞き、大物すぎると思ったからです。でも小山が進めていきます。
積水側がIKUTAを信用した理由は2つ。
・IKUTA側に積水の営業部長と知り合いがいた
・IKUTAの役員に代議士の妻がいた
「旅館内で契約をしたい」
と積水側は申し出ますが
「Aさんの体調が悪い」
という理由で断られます。そして
「4日後までに手付金12億円を支払う」
という約束までし、その後に事務所で初めて積水とAさんは対面します。もちろん偽のAさんです。
対面の時、ボロボロの不動産権利書(もちろん偽物)を見せられ、年月を重ねた権利書だと積水側は感心してしまったようです。結果、積水は12億円の手付金を支払います。
実はこのへんからボロは出ていて偽Aは干支を間違えたりしています。
「積水は騙されている」
内容証明郵便がAさん名義で4通も届きますが、積水側は偽Aに
「これはあなたじゃないですよね」
と聞き、当然偽Aは
「自分じゃない」
と答えるので、怪文書扱い・他社からの妨害行為だと解釈されてしまいます。
実は他にもこの情報に食いついた会社があり、対面まで行った別のブローカーもいました。しかし、そのたわいない会話の際偽Aは、ずっと五反田に住んでいたはずなのに
「私の故郷にもきれいな桜があるからいつか見に帰りたい」
と発言します。それを聞いてそのブローカーは偽物かもと気づき、交渉から下りています。また他の会社も近隣の人に偽Aの写真を見せて確認し、「Aじゃない」という証言を得て手を引いています。
唯一引っかかったのが積水でした。
実はこの段階でAさんは末期がんの状態で面会不能。それを送ったのはAさんの異母兄弟。Aさんの異母兄弟たちは自分たちにも相続権がありますから、おそらくその仮登記を見てAさんの名前で内容証明を送ったのです。
<契約を早める>
早めた理由として、積水のお家騒動が絡んでいます。
積水会長:積水ハウスで会社を2兆円規模にした人
積水社長:会長の影響力のないマンション事業で手柄を上げたい。この契約に尽力してきた常務の手柄を立てることで、自身の影響力を上げたい
そこで社長は直々にこの土地を視察し、社長案件として様々な承認を簡略化していき、契約・支払いが行われていしまいます。
<工事開始と詐欺の発覚>
「通報があったからきたんだけどなにやってるの?」
とやってきます。
異母兄弟が弁護士に連絡し、弁護士が警察を呼んだのです。
積水側は当然のように
「土地を売ってもらったので」
と言いますが
「いえ、売ってません」
その後近隣の住民に偽Aの写真を見てもらいますが
「全然似てない」
「違う人」
その場にいた人は顔面真っ青。
被害額55億円超えです。
<その後>
①偽造パスポートでも公正証書は作成される
②偽造パスポートは容易に安価に入手できる
ということです。
ただ、これは2017年段階のことで、これ以降いろんな手続きは犯罪が起きにくいように改善されています。
<その後の積水>
さらに新しいガバナンス(監督・評価の仕組み)を構築し、逆に社長が会長へ解任動議を出します。今度は社長が入っていて11人になっているので社長が有利。このことで会長は自ら辞任することを選びます。
社長はこの後会長となり2021年3月までその職を務めます。
<その後の土地>
2017年6月ころ本者のAさんは亡くなり、異母兄弟2人が名乗り出で、その土地を相続。2020年1月に旭化成不動産レジデンスに売却。現在はアトラスタワー五反田という30階建ての高級マンションが建っています。
<その後の地面師たち>
警察が操作に着手し、2017年10月16日、犯罪に関わった8人を逮捕。生田、運転係、手配師、なりすまし役、内縁の夫役などです。さらに10月29日には北田を逮捕。
一方、カミンスカス小山はフィリピンへ逃亡します。小山の行動から警察の中に内通者がいたのではないかと疑われています。しかし、警視庁が国際指名手配し、2018年12月、小山は大使館に出頭します。300万円程は持っていましたが、途中からはお金に困るようになっていたようです。そして2019年に日本に送還されました。
更にその上にいた計画役の内田マイクはすでに捕まって網走刑務所にいました。東京・杉並区の駐車場に関することでもなりすまし詐欺を行っており、不動産屋から2億5000万円を騙し盗る犯罪に関わっていて、2015年に逮捕され、保釈中の2016年に今回の積水事件に関与したのです。
網走にいた内田は再逮捕され、東京に移送。懲役12年の実刑判決を受け服役中です。
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