このお話は、2000年に「美女エッセイPART1」掲載した作品です。印刷物として販売したもので、現在のブログとは違って語尾が「だ。である」調です。
東京駅8000円事件 その2
<前編の粗筋>
「なんとしても今日中に、最悪でも明日の朝までに金沢市まで帰らなくてはならないのに、お金がない。できれば金沢までの電車賃全額貸してほしい。」
と、東京駅で、最終便に乗ろうとしていた私に青年が声をかけて来た。
私は、8000円を青年に貸した。
私は私の名刺に
「5/13 8000円お貸ししました」
と書いて青年に渡した。
青年は私に免許証を見せたが、私は青年の名字と、住んでいる町の名前だけを簡単にメモして、電話番号、仕事など詳しいことは何も聞かなかった。詐欺師ならば、免許証の住所になんて現在いるはずもない。電話番号を聞いたところでうそに決まっている。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
夏休みも終わりに近づいた8月28日。
私は5月のあの事件に、一応の解決をみたいと思った。そして、その唯一の手がかりとなりそうな場所に行ってみることにした。
その場所とは、金沢駅前の「時計駐車場」という年中無休の駐車場。
東京駅で
「お金をあまり持っていなくてたくさん貸すことは出来ない。駐車場から車を出すためのお金も必要だし。」
と言う私に青年はこんなことを言っていた。
「あの立体駐車場ですか。あそこなら僕はただで出してあげることが出来ます」
「なんとしても今日中に、最悪でも明日の朝までに金沢市まで帰らなくてはならないのに、お金がない。できれば金沢までの電車賃全額貸してほしい。」
と、東京駅で、最終便に乗ろうとしていた私に青年が声をかけて来た。
私は、8000円を青年に貸した。
私は私の名刺に
「5/13 8000円お貸ししました」
と書いて青年に渡した。
青年は私に免許証を見せたが、私は青年の名字と、住んでいる町の名前だけを簡単にメモして、電話番号、仕事など詳しいことは何も聞かなかった。詐欺師ならば、免許証の住所になんて現在いるはずもない。電話番号を聞いたところでうそに決まっている。
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夏休みも終わりに近づいた8月28日。
私は5月のあの事件に、一応の解決をみたいと思った。そして、その唯一の手がかりとなりそうな場所に行ってみることにした。
その場所とは、金沢駅前の「時計駐車場」という年中無休の駐車場。
東京駅で
「お金をあまり持っていなくてたくさん貸すことは出来ない。駐車場から車を出すためのお金も必要だし。」
と言う私に青年はこんなことを言っていた。
「あの立体駐車場ですか。あそこなら僕はただで出してあげることが出来ます」
それをきいて私は心の中でこう思った。
「この人は、確かに金沢の人らしいし、あの駐車場に知り合いでもいるんだろうな」と。
「この人は、確かに金沢の人らしいし、あの駐車場に知り合いでもいるんだろうな」と。
それを思い出し、とにかく私は駐車場へ行き、事務所へ入れてもらい、簡単に事情を説明した。
するとそこの事務の方はこう答えてくださった。
「今おっしゃるような名前の方はいませんし、私たち従業員のだれも、決してただで車を出せるということはありません。信用にかかわりますから」
この方の答えで私は詐欺にあったのだと確信し、礼を述べて事務所を後にした。
そして向かうは警察。
行ったことのない場所で、ちょっと怖く、ちょっと興味もある。キョロキョロ見渡すと、1階は交通関係らしく、その他の事件は2階より上のようだ。
とりあえず2階へ行ってみようと階段のところまで行くと、向かいのエレベ-タ-にはこう書いてあった。
「健康のため署員は階段を使いましょう」
2階に上がったのはよいが、どこへ行けばよいのだろう。
ふと見ると
「困りごと相談所」
(よしこれだ!)
おどおどと入って行くと
「どうなさいましたか」
「ちょっとお金のことで......」
「盗られたんですか。騙されたんですか」
(後でわかったが、これはだれが担当するかという、結構大事な質問) 「う-ん。まあ、あのお。騙されたと思います。」
「手からひったくられたとかじゃなくて、渡したんですね」
「はい。そうです」
それではとすぐ横の小さな部屋へ案内されながらボソボソと
「東京駅で8000円ほど困ってる青年に貸したら...」
と、そこまで言っただけで
「もうわかった。そいつ今、東京で警視庁に逮捕されてる」
「エッッッッッッ!」
このまま会話形式で書くと長くなるので要約すると
私が8000円貸した青年は、名前や住所は間違いなく私に彼が東京駅で言ったものだった。私に言ったのとよく似た言い方で、東京駅、新宿駅などで、やはり私と同じように1万円弱を貸してほしいと言っては罪を重ねていたらしい。捕まった時は置き引きで、荻窪警察で取り調べられ金沢東署へ照会があったという。
(私もうまく金沢東署へ来てよかった)
「健康のため署員は階段を使いましょう」
ふと見ると
「困りごと相談所」
(よしこれだ!)
おどおどと入って行くと
「どうなさいましたか」
「ちょっとお金のことで......」
「盗られたんですか。騙されたんですか」
(後でわかったが、これはだれが担当するかという、結構大事な質問) 「う-ん。まあ、あのお。騙されたと思います。」
「手からひったくられたとかじゃなくて、渡したんですね」
「はい。そうです」
それではとすぐ横の小さな部屋へ案内されながらボソボソと
「東京駅で8000円ほど困ってる青年に貸したら...」
と、そこまで言っただけで
「もうわかった。そいつ今、東京で警視庁に逮捕されてる」
「エッッッッッッ!」
私が8000円貸した青年は、名前や住所は間違いなく私に彼が東京駅で言ったものだった。私に言ったのとよく似た言い方で、東京駅、新宿駅などで、やはり私と同じように1万円弱を貸してほしいと言っては罪を重ねていたらしい。捕まった時は置き引きで、荻窪警察で取り調べられ金沢東署へ照会があったという。
(私もうまく金沢東署へ来てよかった)
私は彼を24、5歳だと思っていたが本当は28歳で、金沢で自営業を営む56歳の父親も困り果て出来る限り被害者には弁償したいと言っていてる。ただ、私のような少額がほとんどだが、中には75万円、30万円という高額の被害者もいるという。
警察の方がおっしゃるには、今回私は被害届を出してもよいのだが、結論から言えば出さない方がよいという。もし出すと被害に遭った東京駅まで自費で行き、実況検分というのをやり、写真を撮ったり、調書を書くのに付き合わされたりで大変らしい。
警察の方がおっしゃるには、今回私は被害届を出してもよいのだが、結論から言えば出さない方がよいという。もし出すと被害に遭った東京駅まで自費で行き、実況検分というのをやり、写真を撮ったり、調書を書くのに付き合わされたりで大変らしい。
ただ、幸い、この父親は弁償してくれる気もあるし、(法的には、父親は弁償しなくてもよい)私からの話はメモを取ったということでおいておくことになった。
そこで、警察の方はすぐに父親に電話をし、事情を話し、私はその父親と電話で話をすることになった。
息子のことで肩身の狭い思いをしているその父親は大変に哀れで、こちらは被害者だが何だか申しわけないような気にさえなって来た。
結局、
「高額の被害の方もおられますので、今すぐはお返しできませんが、2、3か月中にはできる限りでお詫びしたいので、連絡先を教えてほしい」
ということで電話を終えた。
「全額は無理だな」と感じた。
これでこの話は一応終わりだが、この日警察で教わったことを書き残しておこう。
・私のように、貸す段階で
「ひょっとしたらこのお金は返ってこないかもしれないな」
と感じた場合は、詐欺罪は成り立たなくなる。
(このことは結構詳しく聞いたが忘れてしまった)
これを、
「ギモウサクゴ(疑蒙錯誤)と言う。
・こういう犯罪を扱う担当者のことを
「知能係」という。
・警察にもよくお金を貸してくれと言ってくる人がいる。いかにも返してくれそうも
息子のことで肩身の狭い思いをしているその父親は大変に哀れで、こちらは被害者だが何だか申しわけないような気にさえなって来た。
結局、
「高額の被害の方もおられますので、今すぐはお返しできませんが、2、3か月中にはできる限りでお詫びしたいので、連絡先を教えてほしい」
ということで電話を終えた。
「全額は無理だな」と感じた。
「ひょっとしたらこのお金は返ってこないかもしれないな」
と感じた場合は、詐欺罪は成り立たなくなる。
(このことは結構詳しく聞いたが忘れてしまった)
これを、
「ギモウサクゴ(疑蒙錯誤)と言う。
「知能係」という。
ないなあという時もあるが、自分の処理範囲内で考えてやっている。自分が貸した
ことで2次的、3次的被害がでるような金額ならだめだが。
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私は今回この事件で、損をしたのか得をしたのか?
・この話をもとに道徳の教材を作って、1時間生徒と遊んだ。
・また、私の学級の生徒は、このことを家庭でも話題にしてくれて、それなり
に話題性はあった。
・このことをいろんな人に話して、そのたびに大いに盛り上がった。
・見ず知らずの人を簡単に信じてはいけないという教訓を得た。
・警察に足を踏み入れた。
・この話を聞いてくださった警察の方は、私が5、6年前に担任をしていた男子生
・このことをいろんな人に話して、そのたびに大いに盛り上がった。
・見ず知らずの人を簡単に信じてはいけないという教訓を得た。
・警察に足を踏み入れた。
・この話を聞いてくださった警察の方は、私が5、6年前に担任をしていた男子生
徒の父親であるということが途中で判り、「世間は狭いですねえ」と、その生徒
のことや世間話ができた。
その冊子の題名は
「被害にあわれた方へ」
「被害にあわれた方へ」
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