36歳の時、娘に遅れること1年で通いはじめたお習字教室。
サボりサボり、それでももう3年になろうとしている10月中旬の午後、いつものように小学生に混じって書き始めた。
先生は毎回、3枚のお手本をくださる。同じ字の、楷書、行書、草書。
いつもながら、練習用の紙がなくなるまで書いてもうまくは書けない。それでも出さないと帰れないから、仕方なくそれぞれ1枚を先生に提出した。
先生は
「うん、なかなか良く書けてますよ。それじゃあ西野さん、ここに名前書いてね。真理だけでいいですから。はい、じゃあ、お手本」
先生もよくほめて下さるものだと感謝しながら、言われるままに自分の名前を書き入れた。すると
「これ、表装に出しておきますね。今日ならまだ、町の文化祭の提出に間に合いますから」
「・・・はあ?・・・・・。あの、先生、私出したくありません」
「大丈夫、大丈夫。これ、真理しか書いてないから、どこの真理さんか判らないですから」
そういう問題でもないと思うけど、それ以上先生にさからうわけにもいかず、私は引き下がった。
10月28日土曜日。町民文化祭1日目。
町の人たちの様々な作品の展示場となっている、小学校の体育館に恐る恐る足を運んだ。
自分の作品はすぐに判った。
「まあ、真理だけじゃ、だれか判らないからいいか・・・・・」
と、見ると作品の下には、
「西野真理」
と、名札がつけられていた。
私はすぐにその場を立ち去った。
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