これはおそらく私が30代の頃、内灘中学校で1年生を担任していたときのことだと思います。
道徳の読み物教材に
「吾一と京造」
というのがあります。
山本有三作「路傍の石」からの抜粋です。
簡単にあらすじを紹介すると
いつもみんなで誘い合って学校へ行っている仲間たち。
その日なぜか秋ちゃんが来ない。
吾一は、このまま待っていると遅刻するので先に行く。
仲間も追随するが、京造だけは秋ちゃんを待ってあげて一緒に遅刻し、先生に叱られる。
それを見ながら吾一は悶々とする。
指導者によって展開は様々だけど、私は生徒に意見を出させた上で
「この話には、規則を守るために秋ちゃんを待たなかった吾一たちと、待ってあげた京造がいる。この仲間はバランスが取れている。全員に置いていかれたり、逆に全員に待たれたら、秋ちゃんはかえって困ったのではないか。バランスのいい仲間づくりが大切」
みたいな締めくくり方をしていた。
さて、そんな授業を研究授業ですることになった時、やっぱり吾一と京造の絵が欲しいと思いました。本に挿絵もありましたがどうもピンときません。
そんな時、担任している美術部のT崎さんになんとなく声をかけました。
「吾一と京造の絵、描いてくれない?」
T崎さんはこだわりのない飄々とした女の子で、
「いいですよ」
と軽く引き受けてくれて、翌日には持ってきてくれました。
その絵があんまり素晴らしくて、私は定年の今まで捨てることができず、転勤のたびに持っていきました。もちろん、「吾一と京造」の授業をするときは必ず使わせてもらいました。
北鳴中学校で使ったときなど、同僚の国語教師・百合ちゃんが
「ぜひ使わせてほしい」
とコピーしたほどです。
今回退職にあたって、この絵を20代の鈴木さんに譲りました。
T崎さん、元気かな?
もしこのブログを読んでくれたら、コメントくださいね。
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